私は公園の東屋でタバコをふかしていた。
せっかくの休みというのに、やることもなく、行くところも無くの状態で、近くの大きな公園(と、言ってもバードウォッチング以外の人はまばらな静かな所)のベンチで釣り人を見ていた。
池に釣り糸を垂らしてから一時間ぐらい、全く釣果は無さそうだ。お昼になったので弁当か何かをかき込んでいる。
仰々しい装備の割には、釣りの方に関しては全く動きがない。釣り竿は一切動かない。
その様子を対岸から見ながら私は辛くなってきた紫煙を吐き出した。煙は緩やかな風にのってしばか漂ったあと、新しく来たであろう若いバードウォッチングの人にまで届いたようだ。
「何?凄くいい匂い!」
と言っているのが聞こえる。
今日のタバコは外出用にルームノートに気を遣った、それでいてスパイシーな香りも仄かに感じるオリジナルブレンドだ。
甘いだけではない、複雑な芳香の前でそれがタバコの煙であると看破するのはそう簡単なことではない。特に私の姿が見えない場合は解りようがないとも言える。
しかし、ありあわせで自販機で買ったレモンティーとの相性は最悪だったが。
それはさておき、釣果の無い釣師を見ていて、一時間ぐらいが経ち、ボウルの中は真っ白な灰だけになっていた。部屋と違って外ではは空気の流れがあり、あまり上手にふかさなくても簡単に燃え尽きさせることができる時がある。
スッ、と吸い込みの圧が無くなったときに、ボウルをひっくり返すと、細かな灰が風に乗ってキラキラと輝いた。
雀が5、6羽やってきて、誰かが撒いたパンくずを食っている。
私の近くにたくさんのパンくずか落ちているのだが、私を恐れて近くに来られないようだった。
私は可愛い雀たちをもう少し観察したかったので、座っている場所を移動して、雀たちがパンくずを食べやすいようにしてやった。
近くでパンくずを突く雀たちを見ながら、私は帰り支度をした。
私がここから居なくなれば、雀たちはよりたくさんのご馳走にありつけるのだろう。
私は徐に立ち上がった。
すると雀たちは飛びたった。
少し、驚かせてしまったかもしれない。まあ、私が去ってしばらくすればまた戻ってきて皆でパンくずを突つくのだろう。
対岸の釣師は銅像のように動かない。
その時水面をすーっと風が渡った。
私はその時までこの公園がとても涼しいことに気が付かなかった。
とても心地の良いひと時。贅沢な時間でした。
最後まで読んでくださり、
ありがとうございました。